スーパーカブに関係する本というと、ツーリングや改造、メンテナンスに関する雑誌や書籍が多いと思います。ですから、スーパーカブをモチーフにした小説や物語というのはあまり聞いたことがありません。
そんな中、スーパーカブを題材にした小説と漫画が発行されています。私は普段小説などはほとんど読まないのですが、「スーパーカブ」というタイトルが気になって読んでみました。
今回はその感想などについて記してみたいと思います。
小説(ライトノベル)1巻の感想
本として出版されたのは、著者がトネ・コーケンさんの『スーパーカブ』(角川スニーカー文庫)というタイトルの文庫本の小説です。
小説の文庫本はシリーズ1~3の3冊があります。1巻は280ページを超え、それなりの分量があります。
作品の醍醐味
主人公はバイクには全く無知な女子高生で、ひょんなことからスーパーカブを手に入れ、郵政カブを所有する同級生と次第に仲良くなりながら、様々な展開が繰り広げられるストーリーです。
この作品の醍醐味は、スーパーカブに日々接し、色々な出来事を経験したことがある人ならわかる詳細な描写がたくさんあることです。
スーパーカブに詳しい人に教えてもらいながら書かれたものではなく、スーパーカブを知り尽くした方が書かれたという感じです。事実、あとがきには長年の著者のカブ遍歴が書かれています。
一つ注意が必要なのは、主人公のカブは現行型ではない昔のキャブ車のスーパーカブのことだということです(今でも中古で入手はできますが、中古車市場では依然として人気があります)。
あるある話がたくさん
カブに乗ったことがあって、いろいろな経験があればあるほどよくわかる「あるある話」がたくさんあります。思わずニヤリとする、という表現がよくあてはまると思います(笑)。
たくさんありますが、思いつくままに一部を紹介すると
- ウインカー(独特の操作)
- 燃料計(シートを上げて見る)
- ハンドルロック
- リザーブ&ガス欠
- サイドケース(10円玉で開ける)
- キックでエンジン始動
- オイル交換
などカブ特有の描写が非常にリアルです(笑)。読み進めれば他にももっとたくさんあります。
スーパーカブ中心のストーリー展開
タイトルが『スーパーカブ』なので、当然といえば当然かもしれませんが、作品のストーリー展開はスーパーカブの話題を中心としてなされます。
高校生二人が中心人物でありながら、詳細なカブに関する話が続きます。
カブの基本的な話題の他にも、リヤボックスやパンク修理、50cc以下の原付に感じる不自由さから原付二種への転身、郵政カブやハンターカブなどの発展的な話題も盛り込まれています。
初心を思い出させることも
この作品でスーパーカブ以外にもう一つ心に残ったのは、バイクの免許を取って初めてバイクに乗った時のワクワク感を思い出させてくれるということです。
主人公が原付免許すら持っていない段階からスタートするので、初心者の時代を追体験することができます。
自転車を漕がなくても右手をひねるだけで前進し、上り坂でも力強く進む感動を覚えた記憶をよみがえらせてくれました。当時は魔法の道具を手に入れたかのように、どこへでも行けそうな万能感を覚えたものです(笑)。
漫画化も
この小説をもとに一部コミック化もされています。コミックは、読みやすい!です。たくさんの文字を読むのは苦手という場合は、コミックを読むのもありだと思います。
登場人物やスーパーカブのイラストは、文字だけでは描き切れないことがイメージとして伝わってきます。スーパーカブのイラストなどはリアルに描かれているので、「そうそうそれそれ!」といった感じですね(笑)。
コミックと小説、それぞれの楽しみ方があると思います。続編は出ると思いますので、そちらも期待したいです。
おわりに
作品は、基本的にメカに詳しい人の目線で書かれていると思います。ですから、スーパーカブに乗ったことや触れたことがないという人が読むとどう感じるのか、少し興味がわきました。
カブのことを知らない人が読むと、よくわからないのでは?、とも思えますが、一概にそうとは言えないかもしれないと思ったりもします。
この作品がきっかけで、スーパーカブを買うという方や、バイクの免許を取得する方がでてきてもおかしくはないと思います。スーパーカブに詳しい人もそうでない人も、スーパーカブにまつわる話の面白さや奥深さを感じ取れる作品ではないでしょうか。